Aさんが逮捕・勾留された時点で、弁護人になりました。Aさんは、最初から痴漢行為を行った事実は認めていました。Aさんは、事件が会社に知られてしまうと退職せざるを得ない状況になることから、1日も早い釈放を最大の目的として、弁護活動をしました。被害者は未成年であることから、その両親に対し丁寧な手紙を書き、慰謝料支払いのために面談の申出をしました。
すると、被害者のご両親が弁護人の事務所を訪ねてきました。本件のような場合の慰謝料は、明確な基準がありませんが、弁護人としては50万円程度が相当であろうと考えておりましたが、被害者の両親からは、Aさんの収入の1年分に相当する800万円の請求を受けました。Aさんの妻としては、1日も早い釈放を願っており、300万円までなら支払えるとのことでしたので、被害者のご両親にその旨提案しましたが、頑として拒否されました。被害者の両親の800万円という請求は、余りに過大であり、やむなく、検察官にこの経過を話したところ、示談が成立しない以上起訴せざるを得ないが、起訴後、直ちに保釈申請をすれば、裁判所に対して保釈しても構わないという意見を書いてくれるとの約束を取付けました。
その結果、Aさんは起訴されたものの、直ちに保釈されました。会社に対しては、通勤途中に倒れて入院したということにして、この件が会社に露見することなく、勤務を続けることが出来ました。裁判においては、被害弁償として50万円の供託手続をとり、この事実を明らかにしました。