自動車運転過失傷害(相手が重大な後遺症を負ったが、執行猶予付き判決)
被告人段階→結果:執行猶予付き判決
事案の概要
Aさん(女性)は、自家用車で、自宅敷地から最徐行で大通りに出ようとした際、歩道を左側から自転車を押して歩いてきたBさん(女性)に車を衝突させ、Bさんに脳挫傷・頭蓋骨骨折などの傷害を負わせて、Bさんに対し、寝たきりの生活を送らざるを得ない重篤な後遺症を負わせてしまいました。
Aさんは、事故直後に2回程、意識のない状態にあったBさんを見舞いに行きましたが、その後約4ヶ月経過して、Bさんが意識を取戻した後、BさんがAさんとの面会を求めていたにも関わらず、Aさんの夫だけが月1度程度の見舞いをするだけで、Aさん自身は見舞いに行きませんでした。Aさんは、恐くて行けなかったと述べていました。このようなAさんの対応について、BさんとBさんの家族は、極めて強い怒りをもっていました。
弁護活動
この事件では、AさんやAさんの夫と何回も面談し、「なぜ、被害者Bさんが面会を求めているのに、加害者であるAさん自身が見舞いに行かなかったのか」について、弁護人として、納得出来るまで問い質しました。その中でAさんは、自分の気持ちの中では、謝罪しなければならないという強い気持ちを持っていたけれども、面会したときに、相手からどのような非難を受けることになるか恐くて、どうしても見舞いに行けなかった、と話していました。しかし、どれほど恐くても、きちんと謝罪することが最低限の責務であること、行動で表さなければ、極めて不誠実であると思われても当然であることを自覚してもらいました。また、Aさんはもともと自己表現がうまく出来ない点もあったことから、通常1回で行なう尋問の準備も3回行い、裁判において、当時のAさんの心境を正直に表現した上で、見舞いに行かなかったことが間違っていたこと、そのことでさらにBさんを精神的に傷つけてしまったことについて、被害者や親族にその気持ちが伝わるように謝罪する準備をしました。
弁護士コメント
この事件では、弁護士の活動以前に、事故を起こしてしまった場合、加害者本人が再三見舞いに行くなど、被害者やその家族に対する誠意を示すことが極めて重要なことであることを自覚させられる事件でした。また、本件では、Bさんは一生寝たきりの生活を送らざるを得ない状態になってしまいましたが、Aさんの方では、被害弁償無制限の任意保険に加入していたため、被害弁償が確実にされることは明らかであり、そのことが最低限の救いでもありました。やはり、自動車を運転する以上、幾分の経済的負担はあっても、万一に備えて、任意保険に加入しておくことが必要不可欠です。弁護活動のポイントは、明らかに非常識であるAさんの事故後の対応について、許されることではないものの、裁判官をはじめ、法廷にいる全ての人に、当時、Aさんが謝罪しなければならないと強い気持ちを持ちながらも、なぜ見舞いに行けなかったのか、理解してもらうことを第一に考えて行いました。
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