殺人(産後うつで子を死亡させた事件で、執行猶予付き判決)
被告人段階→結果:執行猶予付きの判決(但し、一定期間の医療観察)
事案の概要
産後うつ状態となったAさんが、生後間もない自分の子供を浴槽内に入れて、死亡させた事案です。
Aさんは、長男出産後うつ状態になり、精神科に2回程通院し、抗うつ剤を処方されたものの、心理的抵抗からこれを飲むことができず、病状が悪化し、強い自殺願望も芽生えていました。そのような状況の中で、ある日突然、風呂場の水で乳児を溺死させるという、極めて突発的な行動に出てしまったのです。
弁護活動
本件では、Aさんの当時の責任能力が最大のポイントでした。弁護人としては、責任無能力を主張し、鑑定申請をするなどして、鑑定人の鑑定書を出してもらいました。また、鑑定人に対し、なぜこのような鑑定になったのかを説明してもらいました。その結果、Aさんは心神喪失の状態にあったとまでは言えないものの、犯行当時責任能力を著しく欠いていたものと判断されました。
弁護士コメント
大変悲劇的な事件で、弁護人としても、事件に関わりながら辛い思いをした事件でした。
Aさんが乳児の命を奪ったことは、許されることではありませんが、周囲の人にうつ病という病気について一定の知識があれば、Aさんに対する対応も異なり、Aさんがこのような行為を行うまでに追い詰められることはなかったのではないかという思いも持ちました。しかし、うつ病になってしまったAさん、その家族、Aさんのかかりつけ医、みんな善意の人達なのであり、そのような中でも、悲劇的な事件が起きてしまうのだということを痛感させられました。
弁護人としては、Aさんが当時おかれていた心理的な状態を詳細に法廷に出しました。裁判官もそれを理解してくれて、Aさんは、執行猶予付の判決を受けることとなりました。その後医療観察法に基づき、Aさんは一定の治療を受けました。Aさんが受けた大きな傷は消えないものの、Aさんの社会復帰に助力出来たことは幸いだと考えています。
当事務所の殺人解決事例
殺人(産後うつで子を死亡させた事件で、執行猶予付き判決)
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